目からウロコ!数え方のナゾ

~ 『数え方の辞典』収録のコラムより ~

特別編15 偶数と切っても切れない豆腐の数え方

ご存知の通り、豆腐は「1丁、2丁」と数えます。昔、豆腐は2個で「1丁」。1個だけ買いたい時は「半丁」と言いました。実はこの「丁」、博打などで使う「半か丁か」の「丁」で、偶数という意味なのです。

豆腐作りと偶数は切っても切れない縁があります。これは、昔ながらの豆腐作りをしている地域の“ご当地豆腐”の切り出し方を見ると納得させられます。例えば、富山県南砺市上梨という地域に伝わる「五箇山豆腐」という豆腐の切り方を見てみましょう。2升の大豆(=1あげ)を使って一度に48丁作ります。豆腐を正方形の枡で固めて切り分けて行きますが、まずは縦横十文字に切って「田の字」にします。この切り分けた四分の一を「1すみ」と言い、さらに、この1すみを横に3つ、縦に4つ切り分けて12丁にします。これが4すみあるので合計48丁になるというわけです。五箇山豆腐1丁分の大きさは、縦6寸(約18.2cm)、横1寸3分(約4cm)、高さ1寸(約3cm)。かなり縦長の豆腐ですが、これをさらに半分(2個)に分けていただきます。

山梨県南巨摩郡身延町の「五合豆腐」は大豆5合分を使いますが、5合で臼「1すり」と数え、長方形の型で固めて12丁に切り分けます。岡山県真庭市中和(ちゅうか)地区では、10丁分の仕切りが底に刻まれている「10丁箱」を使うそうです。いずれの豆腐も偶数に縁があることが分かります。

最近のスーパーには、丸いパックからサーフボード型のものまで、さまざまな形の豆腐が並んでいますが、やはり豆腐は、偶数の意味を残した、きりりと直角に切られた「丁」で数えるものを楽しみたいですね。

参考文献:農山漁村文化協会編 『聞き書・ふるさとの家庭料理 第16巻 味噌・豆腐・納豆』

著者:飯田朝子(いいだあさこ)

東京都生まれ。東京女子大学、慶應義塾大学大学院を経て、1999年、東京大学人文社会系研究科言語学専門分野博士課程修了。博士(文学)取得。博士論文は『日本語主要助数詞の意味と用法』。現在は中央大学商学部教授。2004年に『数え方の辞典』(小学館)を上梓。主な著書に、『数え方もひとしお』(小学館)、『数え方でみがく日本語』(筑摩書房)など。

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