次の文章はどこかが間違っています。その部分を指摘して理由を考えましょう。
【問1】本日はやんごとない用事がありまして、お先に失礼いたします。
【答】「やんごとない」の使い方が間違っています。
「やんごとない(止ん事無い)」は、「止む事無し」が一語化したもので、家柄や身分がひじょうに高い、高貴であるという意味で、「やんごとない生まれ」のように用います。ここでは「よんどころない」「やむをえない」などとするのが適当でしょう。「よんどころない(拠所無い・拠無い)」は、そうするよりしかたがないという意味です。
【問2】雨が小止(こや)みになったので、多少濡れるのは覚悟して、地下鉄の入り口めざして駆け出した。
【答】「小止み」の使い方が間違っています。
例文では、まだ少し雨が降っている状態を言い表していますが、「小止み」は、雨や雪などがしばらくの間降りやんだ状態を言い、「雪が小止みなく降る」のように用います。ここでは、「小降りになったので」とでもすべきでしょう。
【問3】私どもでは役不足で、御社の仕事は任せられないとおっしゃるのですか?
【答】「役不足」の使い方が間違っています。
「役不足」は、もともと、俳優などが割り当てられた役に不満を抱くことで、それが転じて、力量に比べ、役目が不相応に軽いことの意味で使われるようになりました。例文は、役目が低すぎることに不満を感じているのではなく、自分の力量を見くびられたことが不服なわけですから、「力不足」「力量不足」などを使って言い表します。
【問4】電話では、相手の表情がわからず、真心のこもらない慇懃(いんぎん)な受け答えをして、不愉快な思いをさせてしまう。
【答】「慇懃」の使い方が間違っています。
「慇懃」は、真心がこもっていて、礼儀正しいことの意味で、「慇懃なあいさつ」のように使います。ここでは「慇懃」を除くか、「慇懃無礼な」とでもすべきでしょう。
【問5】「あなただけに教える特別な情報なんですよ」などと、口先三寸で金をだまし取られてしまう。
【答】「口先三寸」が間違いです。
正しくは「舌先三寸」で、口先だけでうまく相手をあしらうことの意味になります。例文は、「口先」にも「舌先」同様、本心でない上辺だけの言葉という意味があり、「口先で人を言いくるめる」のように用いるため、勘違いしたものでしょう。
【問6】彼は、その界隈で悪いうわさの絶えない、折り紙付きの不良だ。
【答】「折り紙付き」の使い方が間違っています。
「折り紙付き」は、本来、鑑定保証書がついていることで、転じて、そのものの価値・資格などに定評のあること、保証ができることの意味で用います。例文では、「不良」を強調するために使っていますが、通常このような使い方はできません。「札付きの」などが適当です。
【問7】ぽかぽかとした小春日和の中、春の野山を散策しようと、家族で出かけました。
【答】「小春日和」の使い方が間違っています。
「小春」は、初冬の、穏やかで暖かい春に似た日和が続くころのことで、「小春日和」は、初冬のいかにも小春らしい穏やかで暖かい日和という意味になります。例文のように、春の季節には使えません。