次の文章はどこかが間違っています。正しい表現に直してください。
【問1】前回の二の舞いを繰り返さないよう、計画段階からチーム全員の総力をあげて十分に検討を加える。
【答】「二の舞いを繰り返す」が間違い。
「二の舞い」が、人のした失敗を「繰り返す」意味を含んでいるので、この例文の場合は、「二の舞いにならないよう」のように言い換えればいいでしょう。また、「二の舞いを演じる」「二の舞いを舞う」などの表現もあります。これとは別に、「二の舞いを踏む」という言い方については、「二の足を踏む」との混同から生まれた言い方で、間違いとする説もありますが、誤用と一概に言えないとする意見もあります。
【問2】長い年月をかけてつちかわれてきた、業界の慣習をまったく無視したやり方に、腹が煮え返る思いがした。
【答】「腹が煮え返る」が間違い。
正しくは、「腸(はらわた)が煮え返る」です。
【問3】卒業論文のテーマについて、先生から微に入り細にわたって指示を与えていただきました。
【答】「微に入り細にわたって」が間違いで、「微に入り細に穿(うが)つ」が正しい表現です。
「穿つ」は、「穴をあける。穴を掘る」というもともとの意味から、「人情の機微に巧みに触れる。物の本質を的確に言い表す」という意味をも表し、「穿った見方」「彼の指摘は真相を穿っている」のように使います。
【問4】碁会所(ごかいしょ)では、次の一手を5分も考えていると、「下手な考え休むに似たり」などと嫌(いや)みが飛んでくる。
【答】「下手な考え」が間違い。
この場合「下手」は、「(碁や将棋の)下手な人」の意味の名詞で、「上手の手から水が漏れる」の「上手」と対をなす語です。そのため、正しくは「下手の考え」となります。
【問5】軽妙で、的(まと)を得た表現をなさる先生の、語彙(ごい)の豊かさには、いつも感心させられます。
【答】「的を得た」が間違い。
道理にかなっている、理屈に合っているという意味の「当(とう)を得た」との混同で生まれた勘違いでしょうか。「的」は弓で「射る」ものですから「的を射た」 が正しい表現です。
【問6】わが町の出身者には、近年、全国に有名を馳(は)せた登山家がいます。
【答】「有名を馳せる」が間違い。
「勇名を馳せる」との勘違いでしょうか。この場合は、「名を馳せる」と言うこともできます。