次の文章はどこかが間違っています。正しい表現に直してください。
【問1】先生が申されたことを覚えていますか?(生徒が他の生徒に対して)
【答】「申された」が間違っています。
「申す」は謙譲語で、それに尊敬の助動詞「れる」をつけても、先生の行動を敬う表現にはなりません。この場合は、「おっしゃった」「言われた」などが適当です。
【問2】首相はヨーロッパを御訪問される予定です。
【答】「御訪問される」は新聞などでもよく見かける表現ですが、「御訪問になる」「訪問される」などが適切な表現です。
一説には、「御訪問される」を「御訪問をされる」の「を」が省略された形で、問題はないとする見方もあります。
しかし、例えば和語の「喜ぶ」などと比較して、「お喜びになる」「お喜びなさる」「お喜びされる」と並べてみると、「お喜びされる」は落ち着かない表現となります。ふつう「お…する」の形は、「先生をお招きする」のように、自分の動作の及ぶ相手を間接的に尊敬する働きをもつ表現です。このため「お」と「する」の間に、尊敬すべき相手の動作を表す語は入れにくく、その「する」に尊敬の助動詞「れる」をつけた「ご(お)・・・される」という表現自体がおかしいと考えることができます。
【問3】社長は何時ごろこちらへ参られるご予定ですか?
【答】「参られる」が間違っています。
問1の「申す」と同様、「参る」は謙譲語だからです。「いらっしゃる」「来られる」などが適切です。
【問4】今夜は帰りが遅いので、熱帯魚に御飯をあげておいてね。
【答】「あげる」は、目下の者が目上に物を「与える」ときに使う語です。娘が母親に、例文のように頼んだとすると、「母親」よりも「あげる」対象である「熱帯魚」を高めることとなり、表現として不適切です。
この場合は「餌をやっておいてね」が適当です。
【問5】お客様が気軽に御利用していただけるように心がけております。
【答】「御利用していただける」が不適切です。
この場合は「御利用いただく」「利用していただく」「御利用をいただく」「御利用を賜る」などが適切です。理由は、問2の「ご(お)・・・する」の形は元来謙譲表現で、「お」と「する」の間に、尊敬すべき相手の動作を表す語は入れにくいということからです。
【問6】当店では、最高の品をお安くお求めできます。
【答】「お求めできます」という表現が不適切です。
問5でも説明しましたが、もともと謙譲表現の「ご(お)・・・する」を可能の形にしても、相手を敬う表現にはなりません。「お求めになれます」が適切です。