次の文章は、どこかが間違っています。その部分を指摘して理由を考えましょう。
【問1】彼は若手の中でも群を抜いて優秀だ。幹部の覚えもめでたく、彼の後生(こうせい)畏(おそ)るべしとの、もっぱらの噂だ。
【答】「後生畏るべし」の「後生」は、あとから生まれた者を指します。後進の者は努力しだいでどれほどの力量を身につけるかわからないので、おそれなければならないという意味です。
例文は、「後生」を「後世」と勘違いして、後の時代で彼がどれだけ力を伸ばすか、末恐ろしいという意味で用いようとしています。
【問2】まったく変なところだけ似ちゃって、この親にしてこの子ありだね。
【答】「この親にしてこの子あり」は、本来、このような優れた親があってこそ、はじめてこんなにりっぱな子が生まれるのだということです。また、子は親の性質を受けつぐものだという場合にも使います。
例文は、このような悪い親だから、こんな悪い子が生まれるのだという意味で使っています。これは、本来は誤用とされていたのですが、現在ではこの使われ方が定着して間違いとは言えなくなっています。とはいえ、本来の用法がどういうものであったかを、知らずに使うようなことがないようにしたいものです。
【問3】彼はジキルとハイドのような性格で、清濁(せいだく)併せ呑(の)んだ極端に違った面を持っている。
【答】「清濁併せ呑む」は、心が広く、善でも悪でも分け隔てなく受け入れるという意味で、度量の大きいことのたとえとして使います。
例文は、誤って、よい面と悪い面を両方併せて持っているという意味で用いています。
【問4】今後は、社長のお言葉を他山の石として、自戒いたして参ります。
【答】「他山の石」は、よその山から出た石のことで、そんな質の悪い石でも宝石を磨くのに利用できるところから、自分の修養の助けとなる他人の言行という意味で使います。
この場合は、社長に失礼な言い方となり、恨まれることは確かでしょう。
【問5】あなたもお父様の顰(ひそ)みに倣(なら)って、しっかりとご勉学にお励みください。
【答】「顰み」は、眉間(みけん)にしわを寄せて顔をしかめることで、「顰みに倣う」は、善し悪しも考えずに、やたらに人のまねをするという意味です。
また、他人に倣って物事をすることを謙遜して言う場合にも使われる言葉です。もともとは、『荘子』の「西施の顰みに倣う」から生まれた言葉で、美人の西施が、病気で顔をしかめたところ、それを見た醜女が、自分も顔をしかめれば美しく見えるかと思い、まねをしたという故事に由来します。