ウェブスケールディスカバリーとは、ウェブ上の学術コンテンツやOPACなど、図書館が提供する情報資源をGoogleのように検索することが可能となるツール。その日本化に挑戦した佛教大学図書館の飯野勝則さん。自身の体験談を軸に1月にジャパンナレッジライブラリアンシリーズ第一弾として著書『図書館を変える!ウェブスケールディスカバリー入門』を刊行されました。今回は飯野さんにウェブスケールディスカバリーはもちろん、図書館としてのお仕事、そして図書館や図書館員の未来像についてうかがいました。3回にわたってお送りします。
本を書き始めたきっかけは、ネットアドバンスさんからの依頼だったと思います(笑)。ですが、正直なところ、ありがたいお話だと思いました。
というのも、電子ジャーナルやデータベースの増加は多くの大学図書館にとって、向き合わなければならない現実ですし、そこに含まれる情報を効率的に利用者の手元に届けるということは、どの大学図書館にとっても必須とも言うべき業務です。
そんな状況下で、いささかなりとも自分が携わってきた業務の体験を共有することができれば、他の大学図書館にとっても、何かしらのソリューションを導くきっかけになるかもしれないと考えたからです。
図書館員の性(さが)と言いますか、情報を色々な人々と共有したいと思ったのもこの本を書くことを決めた動機のひとつかもしれません。
1972年生まれ。京都大学大学院文学研究科修士課程修了。鉄道会社、国立大学図書館などの勤務を経て、2004年10月より現職。専門は図書館ウェブサービス、学術情報データベース、学術情報流通等。2011年4 月、日本の図書館として初めて、ウェブスケールディスカバリーサービス(Summon)を公開。
写真/松島吉和
この本の中でいちばん言いたかったことは、情報技術の発展に伴い、佛教大学図書館のような地方にある大学図書館でも、工夫次第でさまざまなサービスを構築することができる可能性があることでしょうか。
インターネットがもたらす学術情報は、手続きさえ正しく行なえれば、世界中で均しくアクセスすることができます。大学図書館にとって、もはや「紙」の図書や雑誌だけでは十分な利用者サービスを行なうことはできません。
そういった情況を踏まえた上で、大学図書館においては、ウェブスケールディスカバリーというツールを工夫して用いることで、さまざまなインパクトを利用者に与えることができるということを知ってもらいたい。それが私の一番の願いです。
またウェブスケールディスカバリーの汎用性の高さは、グループスケールディスカバリーという形で、公共図書館においても一定のインパクトを与えうる潜在力を感じさせますし、データベースを提供するベンダーや出版社にとっては、図書館向けの情報発信ツールとしても十分に機能します。
そう考えると、大学図書館員だけではなく、これから図書館員全般を目指す方や、公共図書館の方、あるいは出版社やデータベースベンダーの方にも読んでいただけるとうれしいですね。
ウェブスケールディスカバリーは図書館にとってのパラダイムシフトを実感させてくれるツールです。しかも、これらからも進化を遂げる余地を十分に残しているという点で、途方もない潜在力を感じさせる存在でもあります。
とはいえ、その潜在的な機能が具現化し、実際に用いられるようになるためには、大学図書館の協力が不可欠であり、成長を手助けする必要があることも事実です。
スポーツに例えると、将来を嘱望される選手といったところでしょうか。大学図書館が監督やコーチとして、その機能をどう育成し導いていくか、真剣に考えていくべき存在なのでしょう。
2016-06-13
『図書館変える!ウェブスケールディスカバリー入門』(ジャパンナレッジライブラリアンシリーズ)
定価:3000円(税別)
発行:ネットアドバンス 発売:出版ニュース社
いろいろなサイトの論文や図書をGoogle のように探せたらいいのに──日本のウェブスケールディスカバリー第一人者がおくる、初めての入門書。自身の「日本化」の体験記を軸に、ウェブスケールディスカバリーの基礎知識、図書館におけるクラウドサービスやビッグデータの活用、そして日本の図書館、図書館員のこれからについても解説します。
chapter1 はじめに
chapter2 ウェブスケールディスカバリーの基礎知識
chapter3 ウェブスケールディスカバリー前夜
chapter4 ウェブスケールディスカバリー「日本化」を目指して
chapter5 ウェブスケールディスカバリーが教えてくれたこと
chapter6 ウェブスケールディスカバリー、その先へ
chapter7 おわりに