テレビ番組から、日々多彩な情報が発信されています。ニュース・情報バラエティ・ドキュメンタリー・ドラマ…その量は膨大です。実は、「テレビから発信される情報」の裏側には、“リサーチャー”と呼ばれるプロフェッショナルの存在がありました。リサーチャーが情報を集めたり、情報の裏をとったりしていたのです。リサーチャーの先駆け、喜多あおいさんに「プロの情報収集術」や「リサーチャーのお仕事」などについて、4回にわたってお話を伺います。
1964年兵庫県生まれ。リサーチャー。株式会社ズノー執行役員。同社「辞書と事典の資料室」室長。同志社大学文学部卒業後、出版社、新聞社、作家秘書などを経て、1994年よりテレビ番組のリサーチャー。手がけた番組は『行列のできる法律相談所』『ガッテン!』『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』など多数。「放送ウーマン賞2014」を受賞。著書に『必要な情報を手に入れるプロのコツ』(祥伝社黄金文庫)『勝てる「資料」をスピーディーに作るたった1つの原則』(マイナビ新書)『プロフェッショナルの情報術』(祥伝社)。
取材・文/角山祥道 写真/五十嵐美弥
「リサーチャー」という仕事は、テレビ番組の制作の際、それに必要なさまざまな情報を収集し、提供する仕事です。
わかりやすい例は、情報バラエティやクイズ番組でしょう。これまで『ガッテン!』(NHK)、『なるほど!ザ・ワールド』(フジテレビ系)、『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)などの情報番組や、『超タイムショック』『Qさま!!』(ともにテレビ朝日系)などのクイズ番組、『ファミリーヒストリー』(NHK)などのドキュメンタリー番組を手がけてきました。
最近は、ドラマや映画の仕事も増えています。テレビドラマの『あなたには帰る家がある』(TBS系)や『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』『家売るオンナ』(ともに日本テレビ系)や、来年公開予定の星野源さん主演の映画『引っ越し大名!』も担当しました。
私たちリサーチャーの仕事は、「素材=情報」を提供することです。そのためにありとあらゆる方法で、さまざまな情報を収集します。
ではその情報収集の一端を、お教えしましょう。
みなさんは何かを調べる場合、何から始めますか? グーグル検索やウィキペディアでしょうか。たしかにネット検索は便利ですし、私も利用しますが、最初にネット検索することを、私はオススメしません。なぜならばネットの情報は玉石混交で、間違っているものも多く、なかなかゴールにたどり着かないからです。何より、「その情報が正しいのかどうか」を判断する材料がありません。仮にネットで情報を得たとしても、それが正しいかどうか、比較検討ができないのです。結局、ネット検索では時間を浪費するだけです。情報収集のスタートは「信頼できるもの」から始めなければなりません。
①書籍(辞書・事典・単行本)→②新聞→③雑誌→④インターネット→⑤対人取材
これが私の情報収集の順番です。
「ジャパンナレッジ」はインターネット上のサービスですが、ジャパンナレッジのコンテンツは辞書・事典を元にしているので、①の書籍と同じ扱いです。つまり最初にジャパンナレッジで検索する。これが私のスタートラインです。ここから情報収集が始まります。
私は、ジャパンナレッジのサービスが始まって間もない2002年から利用していますが、このサイトができると知った時、文字通り、狂喜乱舞しました。「すごい武器ができた!」と思いました。それまでも辞書・事典を使ってきましたが、紙だと答えにたどり着くのに時間がかかります。ジャパンナレッジは横断的に調べることができるので、時間短縮が可能なのです。
ジャパンナレッジで検索する際、最初は本文を読みません。どんな辞書に掲載されているのか、どんな文脈の中に出てくる言葉なのか、そういったことをざっと検索結果のページだけで確認していきます。最後に改めて、有用と思われる検索結果の本文を読み込みます。この時、自分が知っていると思っていることでも、頭をまっさらにして、もう一度最初から丁寧に確認していきます。
ここで大事なことは、「情報の核」をつかむことです。私は収集した情報を、縦軸と横軸で区切ったマトリックス「+」を使って整理するのですが、この「辞書・事典情報=情報の核」をマトリックスの「中心点」に置きます。この核情報を基準に比較検討し、次に入手した情報をマトリックスに配置していきます。例えば縦軸を「時間軸:古→新」、横軸を「深さ:一般的→専門的」とし、情報の分布図を描いていくのです。最終的に、中心点が別のものに置き換わってもかまいません。最初に信頼できる情報で中心点を押さえてから調べ始めることが、情報収集のコツなのです。
2018-12-03
定価:690円(税別)
出版社:祥伝社
テレビの現場で培った「調べる」コツをリサーチャーの先駆者が解き明かす! 正しい情報を得るために役立つ一冊。
目次
プロローグ テレビ番組リサーチャーの仕事とは?
1章 脳内に「情報地図」を描く
集める前に「居場所」を作り、戦略を練る
2章 プロのネタ取りは五つのソースで!
書籍、新聞、雑誌、インターネット、対人取材で「網羅」→「分類」
3章 集めた資料を「情報」に変える
相手に伝わる「報告書」と、必勝「プレゼン」術
4章 仕事の質を上げる!情報に強くなる習慣術
あなたの情報力はたった一分の会話でわかる
エピローグ 情報は生きている