今は情報が溢れている時代です。ネット検索は誰でもできますが、誰もが正しい情報を得ているわけではありません。では、どうやったら上手に情報を調べることができるのでしょうか。リサーチャー・喜多あおいさんいわく、ポイントは「固有名詞」。そのココロは? 喜多さんにお話を伺う第2回目です。
1964年兵庫県生まれ。リサーチャー。株式会社ズノー執行役員。同社「辞書と事典の資料室」室長。同志社大学文学部卒業後、出版社、新聞社、作家秘書などを経て、1994年よりテレビ番組のリサーチャー。手がけた番組は『行列のできる法律相談所』『ガッテン!』『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』など多数。「放送ウーマン賞2014」を受賞。著書に『必要な情報を手に入れるプロのコツ』(祥伝社黄金文庫)『勝てる「資料」をスピーディーに作るたった1つの原則』(マイナビ新書)『プロフェッショナルの情報術』(祥伝社)。
取材・文/角山祥道 写真/五十嵐美弥
「なぜそこまで情報を収集するのですか?」
たまにこう聞かれることがあります。もちろん、リサーチャーという仕事だから、と言ってしまえばそれまでなのですが、私は、仕事如何にかかわらず、誰もがより多くの情報を収集・検討すべきだと思っています。なぜなら、情報を知らないということは、人生においての“機会損失”だと考えるからです。
例えば香港へ旅行に行こうと計画したとします。羽田空港や成田空港から飛行機で約5時間と、それほど日本と離れていませんが、年に何度も遊びに行ける場所ではありません。もしかしたらその一回が最後の一回となるかもしれません。
みなさんならどうやって情報を得るでしょうか。ガイドブック、ネット検索……といったところでしょうか。もちろん、それでも大まかな情報は手に入りますが、ガイドブックを頼りに旅行しても、観光地を一通りめぐるだけで終わってしまい、満足度は高くなりません。
実は、最大の問題は、肝心なことが本人にもわかっていないということです。それはあなた自身の“目的意識”です。いったい自分は何に興味・関心を抱いているのか。わかっているようで、言語化されていないことが多いのです。
まずは書店に出向きます(それが難しい場合はネット書店でもかまいません。私のオススメサイトは、「詳細検索」で「内容キーワード」での検索ができる紀伊國屋書店のウェブストアです)。そして香港関連の書籍を片っ端からチェックしていきます。中身を見るのではありません。タイトルだけを眺めていきます。きっと気になる“固有名詞”が引っかかってくることでしょう。この固有名詞をストックしていきます。
特に気になる本は中身もチェックします(ネット書店の場合は目次をチェックするだけでもいいでしょう)。やはりここでも、ポイントは固有名詞です。
ピックアップした固有名詞を眺めてください。これがあなたの興味・関心の一覧です。これによって、目的が顕在化されたのではないでしょうか。あとはその固有名詞を手がかりに調べていけば、きっとあなたが欲っしていた情報が見つかるはずです。
もちろん、こうして吟味した本を購入して手元に置くのも、楽しみの一つです。
「固有名詞」は、ネット検索でも威力を発揮します。
ネット検索でゴールにたどり着かないのは、検索語が曖昧だからです。例えば、「おいしい和食の店」を探すとしましょう。「和食」と入れただけでは、おいしい店を調べることはできません。結局、「食べログ」などの情報サイトに頼ることになります。
私ならば、過去に行ったおいしい和食の店、行きたいと思っていた和食の店の名前を複数並べて検索します。並べた店名をすべて網羅したページがみつかったら、そこで紹介している、別のお店を見てみましょう。自分の好みにしっくりくるお店の発見があることでしょう。
ネット検索する際は、「マルチウインドウ」が基本です。
ブラウザをパソコン画面に2つ以上立ち上げます。その際、ブラウザも片方がGoogle Chromeならば、もう片方はFirefoxなど別のブラウザにします。ブラウザによって検索の癖があるからです。そして手元のiPhoneではジャパンナレッジ。大きな机に資料をたくさん広げるイメージで、常時2~3のブラウザで検索すると、効率もよく、機会損失を減らすことができます。
情報は「知る」ことや「実用的」であることがすべてではありません。情報は“考えるきっかけ”でもあります。考えるきっかけ(=情報)があるからアイデアも湧くし、あなた自身の人生を充実させる機会も、きっと増えることでしょう。
2018-12-10
定価:690円(税別)
出版社:祥伝社
テレビの現場で培った「調べる」コツをリサーチャーの先駆者が解き明かす! 正しい情報を得るために役立つ一冊。
目次
プロローグ テレビ番組リサーチャーの仕事とは?
1章 脳内に「情報地図」を描く
集める前に「居場所」を作り、戦略を練る
2章 プロのネタ取りは五つのソースで!
書籍、新聞、雑誌、インターネット、対人取材で「網羅」→「分類」
3章 集めた資料を「情報」に変える
相手に伝わる「報告書」と、必勝「プレゼン」術
4章 仕事の質を上げる!情報に強くなる習慣術
あなたの情報力はたった一分の会話でわかる
エピローグ 情報は生きている