VOICE

編集工学研究所(2)企画開発・研究・教育事業
編集力で世の中を変えていく

編集工学のメソッドを伝えるインターネットスクール「イシス編集学校」を運営する編集工学研究所ですが、学校の運営だけがこの研究所の目的ではありません。編集工学を用いた、さまざまなプロジェクトを幅広く手がけています。さて、その具体的な中身とは? 安藤昭子さんと佐々木千佳さんにお話をうかがいました。

ルーツ・エディティング

安藤昭子さん

佐々木千佳さん

株式会社 編集工学研究所

人類のあらゆる営みに潜む「編集」の仕組みを明らかにし、新たな価値を生み出す技術「編集工学」。その方法論を提唱した編集者の松岡正剛氏が、情報化社会に突入していく1987年に創設。「ルーツ・エディティング」「コンセプト・エディティング」「エデュケーション」「クリエーション」などを事業領域とし、内閣府などの官公庁、近畿大学や理化学研究所などの学術機関、リクルートHDやLINE、資生堂などの民間企業といったさまざまな組織と、企画・開発プロジェクトを手掛ける。社員数は15名。運営しているイシス編集学校の卒業生は3万人を超える。

取材・文/角山祥道 写真/五十嵐美弥

――手がけたプロジェクトについて教えてください。

安藤 企業の起源をさかのぼって理念を再構築したり、そこから未来に向けたビジョンを描くことを通して、その企業が持つ本来の価値を引き出していく「ルーツ・エディティング」という手法があります。企業本来の「らしさ」を再発見・再構築する仕事、と言ってもいいかもしれません。インナー/アウター両面のブランディングの基盤として、この手法を導入される企業さんが増えています。こういった仕事を進めるのにもジャパンナレッジは重宝しています。たとえば白川静さんが編纂された『字通』で言葉の起源を調べたり、ある事象を社会背景まで含めて理解をするのに『ニッポニカ』を渡り歩いたり。

佐々木 リクルートのブランディングも手がけましたよね?

安藤 リクルートがグローバル展開するにあたり、リクルートのブランドの根幹を再構築するような仕事を手がけました。日本国内ではよく知られているリクルートですが、いざ世界に打って出ようというときに、「自分たちは何者なのか」という再解釈とそれを表現する言葉の必要性に直面したそうで、松岡のもとに相談にいらっしゃいました。そこで私たちは、リクルートのコアメンバーとのディスカッションを重ねながら、編集工学の手法を用いて、ルーツ、時代性、社会の変動とその中でのリクルートのあり方……といったものを見直していきました。「リクルートらしさ」を改めて編集したのです。それは「リクルートのユニークネス」と題したコンセプトブックとして結実しました。

佐々木 どの企業や団体も、成功体験があるほど、それにとらわれ、違うやり方に気づきにくいものです。私たちは、イシス編集学校で学んだ編集工学を用いて、枠組みそのものを疑い、ブランドや企業文化や言語を考えていきます。これも情報の再編集ですね。編集工学は、思考フレームを飛躍させる「方法」もエンジニアリングします。新たな価値を生むには情報の見方にも技術やサイエンスが必要です。

「らしさ」と未来をつなぐ

――ほかにはどんな企業・団体の「ルーツ・エディティング」を手がけましたか?

安藤 LINEのような比較的新しい企業のルーツ・エディティングのお手伝いもしました。LINEは創業からわずか5~6年で急成長をとげた企業ですが、その成長スピードゆえの悩みも抱えていらっしゃいました。急激な社内環境の変化や人員の増加で、自分たちの存在目的やスタイルのようなものが共有しにくくなっていたようです。「LINEらしさ」を言語化・ビジュアル化した「LINE STYLE」という冊子を制作しました。

佐々木 ほかにも、政府や自治体の仕事など、さまざまな「ルーツ・エディティング」を手がけています。これは、単純に過去を振り返って「らしさ」を再構築する、というだけでなく、これからどこへ向かうのか、私たちがはこんでいる複雑なイメージをもとに、本来から将来を考えることでもあるんです。

安藤 経済成長の流れの中では、皆で同じ方向を向いて、既存のレールに乗っていればともに豊かになっていくことができましたが、もうそういう時代ではありません。日本だけでなく世界中で20世紀につくられた仕組みに歪みが生じ、社会のルールもあちこちで行き詰まっています。これまでの方法論が通用しないとなれば、「方法」そのものから考え直すしかありません。そこに編集工学研究所の存在意義があると思っています。
 私たちの理想は、人それぞれ、企業それぞれ、地域それぞれに内在する本来の力を引き出し、経済と文化が共に支え合うような社会をつくっていくことです。編集工学を用いて、企業や地域の「らしさ」を未来へとつなげていければと思っています。

(つづく)

2019-04-01

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