日本歴史地名大系ジャーナル 知識の泉へ
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第23回 難読地名~草木編(3)

2008年12月19日

草木編の第3回。今回はクサカンムリが付く漢字を使った難読地名を取り上げます。

(問題文をクリックすると答えがご覧いただけます)
第1問
大阪府泉南(せんなん)市の信達(しんだち)地区にある「大苗代」はなんと読みますか?
〈大苗代〉は、泉南市街の東方、樫井(かしい)川の南岸にあります。
 「大苗代」は古く「尾城」とも書きました(JK版「日本歴史地名大系」)。
第2問
岐阜県高山(たかやま)上宝町(かみたからちょう)地区の「苧生茂」はなんと読みますか?
〈苧生茂〉は高山市の北東部、高原(たかはら)川(神通川の上流部)に沿う山間に位置します。
 苧の字音はチョ、訓はカラムシ。カラムシはイラクサ科の多年草で、茎の繊維から織物をつくります。日本では麻や苧の繊維をより合わせてつくった糸を「お」といい、「お」に苧の字をあてることもあります。
第3問
茨城県水戸市の「木葉下町」はなんと読みますか?
〈木葉下町〉は水戸市中心部から北西方へ7~8キロ、鶏足(とりあし)山塊の東方に連なる丘陵山裾に位置します。江戸時代には(すずり)の原材料になる石(史料には「紫石」とみえる)が特産で、また金鉱山も稼動していました。
 「木葉下」の読みは、キノハシタ、キノハゲ、コノハシタ、コノハゲ、コバシタ、コバゲ、コッパシタ、コッパゲのうちでは「コッパゲ」が一番近いでしょうか。

 

次からは「葛」の字がつく地名です。
「葛」はマメ科のつる性多年草植物。字訓はクズ、カズラです。植物の「葛」を東日本ではクズ、西日本ではカズラとよぶ傾向があります。

第4問
秋田県大館(おおだて)比内町(ひないまち)地区にある「大葛」はなんと読みますか?
〈大葛〉は大館盆地に流下する(さい)川の上流部にあり、近世‐近代にかけては、金・銅を産出する鉱山の町として繁栄しました(JK版「日本歴史地名大系」)。
 東日本でも岩手・秋田・山形・福島・長野などでは「葛」を方言で「クゾ」といいました。ちなみに津軽弁では「クジョ」です(日国オンライン)。
第5問
長野県北安曇(きたあずみ)小谷(おたり)中土(なかつち)地区にある「葛草連」はなんと読みますか?
〈葛草連〉は翡翠(ひすい)の産地で知られる(ひめ)川の支流、中谷(なかや)川上流域の山中に位置します。
 「草連」「沢連」「双連」「草嶺」「曽礼」「反」「其」などと記してソーレ、ソレと読む地名は中部日本西部に多くみられ、焼畑に由来。また「ゾレ」は中央日本では崖がくずれたところをよぶ地名です(『地名の語源』角川小辞典13)。
第6問
茨城県古河市の「葛生」はなんと読みますか?
〈葛生〉は古河(こが)市の南部、利根川左岸の低地に位置します。
 茨城の隣県、栃木県佐野(さの)市の「葛生」はクズウで、葛を「クズ」と読む東日本型、古河市の「葛生」はどちらかといえば「カズラ」と読む西日本型でしょうか。
古河市の「葛生」地区。集落の東西両脇に広がる水
田は、かって長井戸沼とよばれた沼沢地であった。

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