ジャパンナレッジに収録された、数々の名事典、辞書、叢書……。それぞれにいまに息づく歴史があり、さまざまな物語がある。世界に誇るあの本を、もっと近くに感じてほしいから、作り手たちのことばをおくります。
──デジタル版の『歴史地名』だから生まれた、森田さんが思うメリットとは何でしょうか。
『歴史地名』には普通の書籍と違って、読者も地域性が強いという特徴があるんです。自分の住んでいる都道府県の巻だけを持っている、という個人読者が非常に多い。新しい巻が出ると、私も営業担当ともどもその都道府県の書店に販促に行きましたが、地元の本ということで書店の反応も良く、ほとんどの巻の新刊時の実売率は8割を超えました。しかし一方で、全巻を通して読むということが、大きな図書館に行かない限り、なかなか難しい。ジャパンナレッジは、個人の全巻通読を可能にしました。ジャパンナレッジ会員になるということは、個人で簡単に全巻揃えるようなものですから。ひとつリクエストするなら、現在は限られた地域だけで行なわれているグーグルの地図と地名などの見出し項目のリンクを全国範囲に広げてもらえれば、もっとありがたい(※現在作業中)。
──あとはどう使いこなすか、ですね。
──歴史や地名に対する興味・関心が深まりますね。
──平成の大合併で、ふるさとの地名がなくなった、という人も増えてしまいました。残念ながら、新しい地名に「歴史」はありません。
──村興しはその土地の歴史を考えて行なうべき、ということですね。
──地域再生に『歴史地名』が役に立つ、と。
2006年10月にジャパンナレッジのコンテンツとして登場した『歴史地名』。平成の市町村合併にも対応し、考古学の最新成果も補充されている。個別ページは、複雑な検索にも対応できる3つの検索窓を用意した「キーワード検索」、書籍を読む感覚で楽しめる「県別閲覧」、「地図・資料」の3コーナーに分かれている。
「キーワード分布図」では、検索した言葉が入った地名が、どの地域にいくつ存在しているか、または分布しているかを一目でチェックすることができる。画像は「梅」のつく見出し項目を検索した結果、作られた分布図。
「いま住んでいる滋賀県についてよく調べています。ジャパンナレッジ版は、その項目だけではなく、関連したものが一気に出てくる。書籍とは違った、新しい発見があり、書籍の作り手にとっても新鮮です」(森田)
森田東郎(もりた・はるお)
1940年生まれ。1963年、三一書房に入社。毎日出版文化賞特別賞を受賞した『日本庶民生活史料集成』を担当。その後、企画・編集プロダクション文彩社設立に参加、『日本都市生活史料集成』(学習研究社、現・学研)を担当。1975年に『日本歴史地名大系』の立ち上げに参画。その後、編集長に就任し、『歴史地名』を完成まで見届けた。

ジャパンナレッジは約1900冊以上(総額850万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。
(2024年5月時点)