ニッポン書物遺産

ジャパンナレッジに収録された、数々の名事典、辞書、叢書……。 それぞれにいまに息づく歴史があり、さまざまな物語がある。 世界に誇るあの本を、もっと近くに感じてほしいから、作り手たちのことばをおくります。

地名から“日本史”の概念をとらえ直した事典

日本歴史地名大系

『日本歴史地名大系』(平凡社刊)。歴史地名事典の決定版といって間違いないだろう。
1県1冊を基本に、四半世紀をかけて全50巻(計51冊)を完結させた。ひとつのシリーズに25年の歳月をかけるなど、今の出版業界では考えられない偉業である。
ではこの『日本歴史地名大系』(以下『歴史地名』)は、どんな経緯でこの世に生まれ、 刊行され続けていったのだろうか。
企画段階から関わり、最後は編集長を務めた森田東郎さんに『歴史地名』のあれこれを伺った。3回に分けて、お送りする。

2009年12月10日(木)更新
構成・文/角山祥道  写真/峯岸雅昭



書物データ

地名をキーワードに、その土地に根ざした人々のいきいきとした歴史を掘り起こす──『日本歴史地名大系』は、中央史中心だったそれまでの"日本史"を鮮やかに塗り替えた、画期的な事典だ。
平凡社70周年の事業として1979年にスタートし、2005年に完結するまで、まさに四半世紀という膨大な年月がかけられた。歴史学はもちろん、地理学、考古学、民俗学、人文学という分野から約2500名の在地の専門家が執筆に携わり、全国47都道府県(+京都市)のさまざまな地名の歴史、文化、生活などを克明に書き起こした。20万項目におよぶ地名には、古代から現代にいたる各時代の行政地名はもちろん、人文地名や自然地名、ならびに遺跡や寺社などの歴史的建造物や遺構といった、その土地に即した独自の項目も多く取り上げられている。五十音順ではなく、地域ごとに項目が配列されているのも、タイトル同様、単なる地名事典ではないことを物語っている。
菊池寛賞を受賞したこのシリーズは、研究者だけでなく、その土地に少しでも興味のある人ならぜひ心に留めておきたい書物である。

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