福井県の南西部に位置する小浜市は、日本海に面した港町。古くから日本海海運の要地であり、古代には若狭国府、鎌倉時代には守護所が市域に置かれるなど、若狭地方の政治・経済の中心地として発展、江戸時代には小浜藩の城下町として賑わいました。
アメリカ大統領選挙でヒラリー・クリントン候補と民主党の指名を争っているバラック・オバマ候補を、名前が通じているとの理由で小浜市民が応援する《オバマ・フィーバー》振りが、近頃たびたび、マスコミに取り上げられます。市の観光協会(若狭おばま観光協会)のホーム・ページによると、事の経緯は次のよう。
平成18年(2006)にオバマ氏が来日した際、税関職員が氏に「私、小浜の出身なんです」と声をかけたところ、オバマ氏は「私は、小浜から来ました」とジョークを言った、との話が広まります。この話を知った村上小浜市長は、翌19年1月、小浜の名前を広めてくれたお礼の意味を込め、礼状と小浜市を紹介する英語版パンフレット、それに特産の若狭塗の夫婦箸をオバマ氏に送りました。
以来、小浜市ではオバマ候補を応援しようという気運が芽生え、今年2月4日のスーパー・チューズデーに観光協会を中心に「オバマ候補を勝手に応援する会」が結成されます。これをテレビ各局がこぞって取り上げ、海外メディアも取材、さらに、さまざまな《オバマ氏応援活動》が展開中、というものです。
この《オバマ・フィーバー》以前、小浜市は、そろそろフィナーレを迎えるNHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」の主人公喜代美(徒然亭若狭)が、青春時代を過ごした土地として脚光を浴びました。「ちりとてちん」では喜代美の父、祖父ともに若狭塗箸の職人という設定ですが、〈若狭塗〉は、もう一つの伝統工芸である〈めのう細工〉とともに江戸時代から盛んで、現在、塗箸は全国の8~9割の生産量を誇っています。
しかし、小浜の特産といえば、なんといっても豊富な海産物類をはずすわけにはいきません。「ちりとてちん」でしばしば取り上げられた焼サバ、へしこ(サバのぬか漬)のほか、サバのなれずし、小鯛のささ漬、若狭フグ、若狭ガレイ、若狭グジ、若狭カキ、カニ、イサザ(「シロウオ」のこと)などなど、枚挙にいとまがありません。
古代の若狭国は、志摩国・淡路国・伊勢国などと並び、天皇に贄(にえ=神に供えたり、天皇に献上したりする食物。とくに魚や鳥など)を貢進する
かつて、こうした海産物類を京へと運んだ道が
市内には〈建造物〉〈史跡・名勝〉〈絵画〉〈彫刻〉で、複数の国指定以上の文化財を保持する寺院が
寺名 | 建造物、史跡・名勝 | 彫刻・絵画 | ||
指定名称 | 時代 | 指定名称 | 時代 | |
明通寺 | ★本堂 | 鎌倉中期 | 木造薬師如来坐像 | 平安後期 |
★三重塔 | 鎌倉中期 | 木造降三世明王立像 | 平安後期 | |
木造深沙大将立像 | 平安後期 | |||
木造不動明王立像 | 平安後期 | |||
妙楽寺 | 本堂(附・厨子) | 鎌倉後期 | 木造千手観音立像 | 平安中期 |
神宮寺 | 仁王門 | 鎌倉末期 | 木造男神・女神坐像 | 室町初期 |
本堂 | 室町末期 | |||
羽賀寺 | 本堂 | 室町中期 | 木造十一面観音立像 | 平安前期 |
木造千手観音立像 | 平安後期 | |||
木造毘沙門天立像 | 平安後期 | |||
国分寺 | 若狭国分寺跡 | 木造薬師如来坐像 | 鎌倉初期 | |
萬徳寺 | 庭園 | 江戸初期 | 木造阿弥陀如来坐像 | 平安後期 |
絹本著色不動明王三童子像 | 平安末期 | |||
絹本著色弥勒菩薩像 | 鎌倉中期 | |||
円照寺 | 木造大日如来坐像 | 平安後期 | ||
木造不動明王立像 | 平安後期 |
このほかにも国指定以上の文化財を保持する神社・仏閣に、
などがあります。
国指定の文化財は所蔵していませんが、若狭国の一宮である若狭彦神社(上社)・若狭姫神社(下社)も由緒ある神社。また、市内を流れる
現在、小浜市と福井県は、これら数多くの文化財が集中する小浜を《「若狭の社寺建造物群と文化的景観」-神仏習合を基調とした中世景観》の名称で、ユネスコの世界文化遺産暫定リストへの登録を求めて活動中。
ところで、たとえば、世界自然遺産の白神山地や知床、同文化遺産の紀伊山地の霊場と参詣道(いわゆる熊野古道)、石見銀山遺跡とその文化的景観(石見銀山)などでは、世界遺産登録以前と以後では、訪れる観光客の数が桁違いといいます。小浜の史跡・文化財をのんびりと訪ね歩き、豊かな食材にゆったりと舌鼓をうつチャンスは、今のうちかもしれません。