今回の難読地名は十二支編です。十二支(ジュウニシ。子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)は十干(ジッカン。甲・乙・丙・丁・戊・己・庚・辛・壬・癸)と組み合わせて、年月日・時刻・方角などを表わす名称として用いられます。ネドシ(子)、ウマドシ(午)、サルドシ(申)など、生まれ年の「えと」としても馴染み深い字です。JK版日国オンラインは「十二支」について次のように記します。
『本来は、木(歳)星が一二年で天を一周することから、中国の天文学で毎年度における木星の位置を示すために天を一二分した場合の称呼である、子(し)・丑(ちゅう)・寅(いん)・卯(ぼう)・辰(しん)・巳(し)・午(ご)・未(び)・申(しん)・酉(ゆう)・戌(じゅつ)・亥(がい)の総称。これらを一二の動物にあてることから、日本では、ね(鼠)・うし(牛)・とら(虎)・う(兎)・たつ(龍)・み(巳)・うま(馬)・ひつじ(羊)・さる(猿)・とり(鶏)・いぬ(犬)・い(猪)とよむ。一二年ごとに一巡する年まわりを示し、また十干と組み合わされて、六〇年で一巡する年、あるいは六〇日で一巡する日をあらわすほか、時刻や方角などを示すのに用いられる。十二辰。十二。』
そこで「日本歴史地名大系」に十二支の字を用いた見出し項目がどのくらいあるかを調べてみました。併せて鼠・牛・虎など、十二支にあてられる一二の動物を表わす字(ただし、巳には蛇の字をあてています)を用いた見出し項目数とも比較しました。以下のとおりです。
十二支の字 | 出現数 | あてられる動物の字 | 出現数 |
子 | 1348項目 | 鼠 | 19項目 |
丑 | 4項目 | 牛 | 458項目 |
寅 | 7項目 | 虎 | 32項目 |
卯 | 17項目 | 兎+菟 | 36項目 |
辰 | 59項目 | 龍+竜 | 616項目 |
巳 | 20項目 | 蛇 | 64項目 |
午 | 7項目 | 馬 | 996項目 |
未 | 6項目 | 羊 | 4項目 |
申 | 19項目 | 猿 | 158項目 |
酉 | 7項目 | 鳥+鶏 | 653項目 |
戌 | 5項目 | 犬 | 145項目 |
亥 | 5項目 | 猪 | 166項目 |
「子」と「未」を除けば、十二支の字を使った項目より、あてられる動物の字を用いた項目のほうが圧倒的に多いことがわかります。また「卯」の字を含む17項目では、「卯」の読みはすべて「ウ」、同じく59項目の「辰」の読みはすべて「タツ」か「シン」、19項目の「申」の読みもすべて「サル」か「シン」と、十二支の字は一般的な読み方が多く、難読に取り上げる地名は少ないようです。それでも1348件ヒットした「子」の字のつく項目には、いくつか難読地名も含まれています。
では次にあげる「武子」「恵子」「幸子」「瀬戸子」と記す地名はなんと読むのでしょうか? 「タケコ」「ケイコ」「サチコ」「セトコ」ではないことだけは確かです。
鹿沼(カヌマ)市街の北方、利根川水系姿川(スガタガワ)の支流、武子川が形成した段丘上に展開する地域です。
那珂川町(ナカガワマチ)の北部、福岡市南区に程近いところで、福岡平野と脊振山地(セブリサンチ)が接する地を占めます。
福岡県の東端部を占める吉富町(ヨシトミマチ)の南部にあります。北流する山国川(ヤマクニガワ)の左岸に位置し、対岸東方は大分県中津(ナカツシ)です。
青森市の北西部、陸奥湾を望む地にあります。地域の南辺を流れる瀬戸子川が陸奥湾に注ぎ、海浜部を青森市と函館市を結ぶ国道280号やJR津軽線(津軽海峡線)が通っています。
もう一つ「子」の付く地名です。もちろん読みは「タケコ」ではありません。
鹿児島県国分市(コクブシ)と周辺の姶良郡(アイラグン)の6町が合併して誕生した霧島市の北西寄りに位置します。かつては姶良郡溝辺町(ミゾベチョウ)に属し、同町の北端部を占めていました。
次は「寅」の字の付く地名です。
江戸時代には、蝦夷松前(マツマエ)城下の一町で、松前城の東方に位置しました。伝治沢川(デンジサワガワ)から及部川(オヨベガワ)に至る海岸沿いの地域、現在の松前町月島(ツキシマ)・朝日(アサヒ)の一帯にあたります。
最後は「未」の付く地名です。「未明」はもちろん「ミメイ」とは読みませんが、「未明」からなんとなく連想できそうな読み方です。
現在の安来(ヤスギ)市域の東部、市街からは南東方にあたる地に位置します。かつては能義郡(ノギグン)伯太町(ハクタチョウ)に属し、伯太川支流安田川(ヤスダガワ)の流域山間部を占めていました。現在は安来市「伯太町未明」が正式な地名です。