環境省自然環境局が発表した「平成24年度温泉利用状況」によりますと、日本の温泉地数は約3000。都道府県別のベスト5は北海道(254)、長野県(217)、新潟県(154)、青森県(143)、福島県(135)の順。逆に少ないほうは、沖縄県(5)、東京都(17)、鳥取県(18)、佐賀県(21)の順で、22か所の埼玉県と滋賀県が後ろから5番目で並んでいます。
この環境省発表データの諸項目(源泉数、湧出量、温泉施設数、年度延宿泊者数など)を勘案して(株)日本温泉総合研究所が発表した都道府県別の温泉番付ベスト5は、1位が北海道、2位に長野県と静岡県が同ポイントで並び、4位大分県、5位鹿児島県の順となっています。
温泉地数、番付ともに1位「北海道」を代表する温泉の一つ「登別温泉」
北海道・長野県を除くと温泉地数ベスト5と違う顔ぶれですが、どちらかといえば、番付ベスト5のほうが、読者の方々の思いに近いのではないでしょうか。筆者は、そのバラエティの豊かさ、また歴史に厚みがある温泉が多いことなどから、「温泉県」といえば真っ先に群馬県を思い浮かべるのですが、温泉地数は8位、番付は9位で、ランクインはなりませんでした。
ところで、環境省のデータ諸項目のなかで、42度以上の源泉数(長野県の替わりに熊本県がベスト5入り。あとは番付ベスト5と同じ顔ぶれ)、利用している自噴源泉の数(静岡県の替わりに宮城県がベスト5入り。あとは番付ベスト5と同じ顔ぶれ)の2項目が番付ベスト5と高い関連性を示していました。そうしてみますと、「高温・自噴」が集客力のある温泉に求められる要素(結果として温泉番付のランクを押し上げる)といえるでしょうか。
ジャパンナレッジの詳細(個別)検索で、近世(江戸時代)以前の記述に主眼を置く「日本歴史地名大系」を選択、「温泉」と入力して、後方一致の条件で見出し検索をかけると266件がヒット。また、「温泉」を全文、「村」を見出し(後方一致)で、「かつ(AND)」検索をかけると1119件がヒットします。もちろん、この1119件のなかには重複も多く含まれますが、そのことを勘案しても、現在の日本の温泉地数(約3000)の3分の1近く(あくまでも見当です)は、「日本歴史地名大系」の基本項目である近世村落(「村」項目)のなかで、何らかのかたちで言及されていること、加えて1割近く(266件)が独立した項目として扱われていることがわかります。
「温泉好き」の伝統が反映されている、といえるでしょうか。しかも、前述のように「日本歴史地名大系」は、現在のような掘削技術があまり発達していない江戸時代以前の記述が主ですので、立項、言及された温泉のほとんどは(高温かどうかは別としても)「自噴泉」といえそうです。
温泉に多い地名といえば湯本(湯元)、湯沢、湯村、湯川など、「湯」の字が含まれている、と断言しても異存はないと思われます。「日本歴史地名大系」で、今度は「湯」の見出し(部分一致)と「村」の見出し(後方一致)をつないで「かつ(AND)」検索をかけますと、258件がヒット。また、「湯」の見出し検索(部分一致)と「村」の見出し(後方一致)に「温泉」の全文検索を加えて「かつ(AND)」でつないだ場合は115件がヒットします。また、「湯」の見出し検索(部分一致)と「温泉」の見出し検索(後方一致)を「かつ(AND)」でつなぐと49件がヒットします。
数多い「湯本」地名を代表する温泉の一つ、栃木県の「那須湯本温泉」
この検索結果は何を表しているかといいますと、全国に「湯」の字が含まれる近世村項目(現在の大字に相当)が約250か所あり、その半数近くは何らかのかたちで温泉に関わりあいをもっていること、また「日本歴史地名大系」で独立した項目として扱われた温泉のうちの2割弱が「湯」の字を含む名称であることが判明します。
次回も引き続き「温泉」にまつわる話題をお届けします。
(この稿続く)