川口という地名(「河口」の表記もあります)は、それこそ全国各地に分布しています。JK版「日本歴史地名大系」の個別検索で「川口」(見出し・部分一致)および「河口」(同)と入力してOR検索をかけると、132件がヒットします。
JK版「日本国語大辞典」で「かわぐち」(表記は【川口・河口】)を調べてみると、「川の流れが海や湖にそそぎこむ所。かこう。川尻。江口(こうこう)。」とありますから、「川口(河口)」は、まさに川の河口部を表す地名ということになります。
先ほど「川口」「河口」のOR検索で132件がヒットしたと記しましたが、地名と神社仏閣名や遺跡名・城郭名などとの重複を避けるために(完全に重複を排除することはできませんが)、「川口・河口」(部分一致)と「日本歴史地名大系」の基本項目である(江戸時代の)「町・村」(後方一致)をAND検索した結果を下表にまとめてみました。
入力語1(部分一致) | 入力語2(後方一致) | AND・OR | ヒット件数 |
川 口 | 村 | AND | 52 |
川 口 | 町 | AND | 10 |
河 口 | 村 | AND | 6 |
河 口 | 町 | AND | 3 |
大雑把にいえば、「日本歴史地名大系」では全国で約70箇所の「川口(河口)地名」を項目として立てている勘定になります。そこで、この約70件の川口(河口)地名の立地状況をざっと調べてみました。
その結果、福山湾に注ぐ
しかし、奥羽山脈の山懐に抱かれた出羽国
こと、地名に限っていえば、「かわぐち」の「川の流れが海や湖にそそぎこむ所」という文言は、「川の流れが海や湖、また支流がその本流にそそぎこむ所」というふうに修正しなければいけないかもしれません。
もちろん、川口(河口)地名は海や湖に川が注ぎ入る地にもありますから、a=海に川が注ぐ所、b=湖に川が注ぐ所、c=川の合流点の3パターンが、川口(河口)地名の王道といえるでしょうか。
ところで、現在、市町村の名称に川口(河口)地名が用いられているのは、埼玉県の川口市と山梨県
ここからは、長岡市に編入されてしまった川口町を含め、3箇所の自治体「川口(河口)地名」を検討してみましょう。はじめは山梨県の富士河口湖町です。町名の由来となったのは江戸時代の甲斐国都留郡川口村(史料では「河口村」の表記もみえます)。この「川口村」は、
次は新潟県の旧川口町。同町の町名由来となったのは江戸時代の越後国魚沼郡川口村。同村は、魚沼川が信濃川に合流する地を占めていましたから、cパターン、「合流点の川口」ということになります。では、埼玉県の川口市はどうでしょうか?
川口市の市名由来となったのは江戸時代の武蔵国足立郡川口町。江戸と日光を結ぶ街道、
しかし、一般的に現在の埼玉県川口市に継承される「川口」という地名は、同所がかつて
(この稿次回に続く)