日本歴史地名大系ジャーナル 知識の泉へ
日本全国のおもしろ地名、話題の地名、ニュースに取り上げられた地名などをご紹介。
地名の由来、歴史、風土に至るまで、JK版「日本歴史地名大系」を駆使して解説します。
さらに、その地名の場所をGoogleマップを使って探索してみましょう。

第7回 あなたもチャレンジ! 難読地名~虫類編(1)

2007年08月17日

難読地名の第5回です。前回までの鳥獣編はひとまず終わりとし、今回と次回は虫類編をお送りします。ここでいう〈虫類〉とは、動物一般のうち鳥獣・魚介類を除いたものの意で、あまり厳密な分類ではありません。日国オンライン(JKセレクトシリーズ)で〈虫類〉をひくと、「人や獣や鳥類、また、魚介類以外の昆虫などの動物の総称」とあります。またJK版日本大百科全書の〈虫〉の項は「一般に昆虫類の総称として用いられるが、動物の総称でもあり、鳥を羽虫、獣を毛虫、亀(かめ)の類を甲虫、竜のように鱗(うろこ)のある動物を鱗虫(うろこむし)といい、人間を裸虫(はだかむし)などといったりする。また鳥獣魚貝などを除いた小動物を総称したり、道教で人間の体内にすむと説く三尸(さんし)の虫をいったり、人体に寄生する回虫などもいい、近世には、人間の体内にあって、その人の健康状態や感情の動きにさまざまな影響を与える9匹の虫の存在が信じられていた」と記しています。そこで難読地名~虫類編では昆虫などのいわゆるムシはもちろん、カメ、ヘビ、ワニ、トカゲなどの爬虫類やカエル、イモリなどの両生類なども含む〈ムシ〉の漢字を用いた地名を対象とします。

まずはじめは、そのものずばり「虫」の付く地名です。「虫」の字を用いた地名は広く全国に分布しており、JK版日本歴史地名大系の検索機能を利用すると、「虫」の字は見出し検索(部分一致)で64件、全文検索では1905件ヒットします。ただし、広く知られる青森県の浅虫温泉(アサムシオンセン)や日光の鳴虫山(ナキムシヤマ)など、「虫」の字を含む地名の多くは「虫」の部分を「ムシ」と読んでおり、難読地名としては取り上げにくいものです。そこで64件ヒットした「虫」の見出し検索(部分一致)のうち、「ムシ」の読みを含まない項目を探してみましょう。JK版日本歴史地名大系の〈見出し〉は読みのデータを保有しています (ただし、項目見出しのみ。中見出しは〈読みのデータ〉を保有していません)。キーワード検索欄(見出し・部分一致)に「虫」の字を入れ、さらに「次を含まない(NOT)」欄に「ムシ」の読みを入れて検索しますと、「虫供養と絵系図まいり」(滋賀県)と「虫追村」(島根県)の2件がヒットします。「虫供養と絵系図まいり」は「ムシクヨウトエケイズマイリ」で「ムシ」の読みを含みますが、〈読みのデータ〉を保有していない中見出し項目(滋賀県東近江市能登川地区の〈妙楽寺〉の中見出し)なのでヒットしました。そうしますと、〈日本歴史地名大系〉の項目で「虫」の字を含み、「ムシ」の読みを含まないのは「虫追村」ただ一つということになります。

(問題文をクリックすると答えがご覧いただけます)

そこで第1問は

現在の益田市(マスダシ)中央部を貫流する高津川(タカツガワ)の下流部左岸の平地を中心に展開した江戸時代の村です。現在は益田市虫追町といい、地内の正清(シヨウセイ)山には虫追八幡宮が祀られています。

第2問は「虫」の字があり、しかも「ムシ」の読みを含む神社の名前です。「鹿」を「シカ」と読むかどうかがポイント。

犬山市街の南東方、前原(マエハラ)地区に鎮座。「延喜式」神名帳にみえる尾張国丹羽郡(ニワグン)の「虫鹿神社」にあてる説があります。

次はクモ類や昆虫類の字を含む地名です。

新潟市南区の南東部、信濃川左岸に位置し、合併以前は白根市(シロネシ)に属していました。クモは漢字では一般に蜘蛛と記しますが、蜘も蛛も単独でクモの意があります。そういった意味では難読地名ではないかもしれません。

現在の和水町(ナゴミマチ)の南部、旧菊水町(キクスイマチ)域に位置します。菊池川(キクチガワ)水系に属する蜻浦谷川の左岸にあたり、浦といっても山間地の地名です。

金沢市街の北部を流れる浅野川(アサノガワ)の下流域に位置します。川の左岸を蚊爪町、右岸を東蚊爪町といい、両地区を繋いで浅野川に架かる橋を蚊爪橋といいます。

岡山県の北西部を占める新見市(ニイミシ)の南部山間地、高梁川(タカハシガワ)の支流本郷川(ホンゴウガワ)の最上流域に位置します。かつては哲多郡(テッタグン)哲多町(テッタチョウ)蚊家でしたが、哲多町が新見市に合併したため、現在は新見市哲多町蚊家となりました。

佐賀県の北部中央に位置する唐津市(カラツシ)にあります。同市厳木町星領(キュウラギマチホシリョウ)地区と浜玉町平原(ハマタママチヒラバル)地区を結ぶ峠です。合併以前は東松浦郡(ひがしまつうらぐん)厳木町と同郡浜玉町の境界に位置していました。

蚊家村
蚊家村

新見市南部山間地、本郷川の最上流域に位置する蚊家地区

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